北海道新聞社 編集局 御中 編集委員 原田伸一 様

寒中御見舞申し上げます。昨年中は大変お世話になりました。今年も宜しくお願い致します。

私は日本の国民ではありませんし多少差し出がましく思われるかもしれませんが、今回の兵庫県南部地震について私なりの考えを手紙にさせていただきます。宜しくお願いします。

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1月17日から兵庫県の大災難の映像を見続けている。毎日、死亡者、行方不明の方の数が増え、被災者の方々の気持ちを考えるといたたまれない。なぜ今回の災害がここまで大きくなったのだろうか、ある程度避けられるはずなのにとも考えた。突然、私は我が国のカリフォルニア州のサンフランシスコとロスそれぞれの大地震を思い出した。その時も私は日本に居て、日本のテレビで破壊された道路や高架をじっと見続けた。ところが、その際、ある日本の建設省の方や工学者のコメントがとても脳に焼き付いた。「日本ではこういう事がありえません。」と発言した事が、本当に無責任で傲慢だなと感じた。

今回、又コメントを期待して、テレビから目を反らさずワイドショーや深夜の番組を見た。さすがに同じ様な工学者が結局登場し、情勢について回答した。特に覚えているのは破壊された阪神高速道路で、ある報道陣がひどい事実を述べた。神戸市境で高架の柱の構造が異なる。市に入る前、柱が頑丈でちゃんと地震を耐えたが、ちょうど神戸市に入るとたん柱は歪んでドミノの様にずっと倒れた。それについてやはり神戸市の建設基準が低いのではないでしょうかとアンカーマンが工学者に聞いた。いい質問だったと思う。

しかし、この工学者はすなおに「何かの間違いだった」とか「建設省のチエックがおこたった」と素直に認めなかった。かえって、変な言い訳をした。例えば、日本の地震はアメリカのと違う。もっと強くて震え方が異なる。神戸市の土地が弱い、そしてまさか地震が起きる所だと思わなかった。その高速道路がプレートの割れ目の真上に建築され、計った震度6度より強かったんじゃないか。建物が古い為、30年前の建設基準では良かったのに。等をいい理由にし、仕様がない様な言い方をした気がする。

それはある程度そうだと思うが、安全に問題があった事に変わりはない。せめて公共建築物 (道路の高架や列車の駅)位は破壊されてはならないはずだった。安全性について当局の注意が足りなかったと思う。これは建設省の責任であり、きちんと責任を取らなければならないと思う。まだ建設省は充分反省する姿勢を見せていないと思う。

1、2日前、アメリカの友達と電子メールで文通した。受信によると、「ほら!ありえないと威張って言ったのに。道路を通れないから救急はうまく作動出来ない。だから犠牲者が増えただろう。」とアメリカでは声が高まている。だから、この大地震は大変な悲劇だと思うが、無責任油断もあり、日本の恥にもなる可能性も出てくると思う。

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以上

平成7年1月21日 アルドウインクル デビッド


(全面的に検閲されて「外人は感情的だね」と片付けた北海道新聞に載せた記事(jpeg)はここです。)